25 小特集 どこへ行く? PTA 活動経験のある母親たちの正直な 回答だろう。つまりPTA活動に 参加した多くの人たちは,活動に よってある種の「成果」を得てい るのである。小論では,このよう な活動参加によって得られた成果 の認識がPTAのみならず他の社 会活動への参加意向にもつながる ということを示し,PTA活動の 正の側面について述べてみたい。 向社会行動としてのPTA活動 小論で紹介する研究は,妹尾と 高木のボランティア活動に関する 一連の研究から着想を得た調査で ある。PTA活動には確かに負担 が伴う。程度の差はあれ,自分の 都合や時間を犠牲にして,わが子 だけでなく学校のための活動をし なければならない。その意味で, PTA活動は,ボランティア活動 と共通性を有する一種の向社会行 動という観点から検討することが できる。妹尾と高木(2003)は, ボランティア活動が,条件によっ ては将来の援助行動を促進するな ど援助者自身にも肯定的な効果を 及ぼすことを明らかにしている。 また妹尾(2008)は若者のボラン ティア活動について,「活動参加 が自発的な意思決定によるかどう かにかかわらず,ひとたび活動に 参加し,その活動を通じて自らの 行動の役立ちが実感できれば,活 動に満足し,以後ボランティア活 動を継続することが示唆された (p.39)」と述べている。言うまで もなく,PTAへの参加は必ずし も自発的ではない。しかし,活動 を通して一定の成果認識が得られ れば,またPTA活動に参加しよ うという意欲,さらには他の社会 活動にも参加してみようという意 はじめに 多くの母親にとって,授業参観 や運動会などの行事のときに学校 に出向き,わが子の姿を見ること は楽しみであり,生活の中で優先 順位の高いイベントだろう。しか し,PTA役員や各種の委員など が回ってくるとなると,とたんに 後ろ向きになり,押しつけ合い になる。PTA活動には,活動の 意義がわかりにくい,活動時間の 制約が多い,選出方法に納得でき ないなど数々の問題が存在してい ることは確かである。しかし,そ のような議論が必要なことは踏ま えたうえで,まず図1を見ていた だきたい。これは中山(2016)に おいて,「PTA活動についてのあ なたの考えをお聞きします」と して,各項目に自分の考えがど れくらいあてはまるかを5件法で 回答してもらった結果の一部であ り,一度でもPTA活動に参加し たことのある母親120名のデータ である。例えば「PTA活動をす ることで自分に新しい友達ができ た」「他のPTA会員と楽しく活動 することができた」という項目 は,「非常によくあてはまる」「わ りとあてはまる」への回答をあわ せると60%以上にのぼる。調査 はWeb上で調査会社のモニター を対象にして実施しているため, 「学校や先生に配慮した回答」と いうようなものではなく,PTA
向社会行動という観点からの PTA 活動
奈良女子大学文学部 教授中山満子
(なかやま みちこ) Profile─中山満子 大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程退学。博士(人間科学)。大阪市立大学大学院創造都市研究科助 教授などを経て現職。専門は対人心理学,社会心理学。著書は『知覚:身体的リアリティの諸相』(分担執筆, ユニオンプレスより近刊予定)など。 15.0 17.5 11.7 9.2 7.5 PTA 活動をすることで自分に新しい友達ができた 他の PTA 会員と楽しく活動することができた PTA 活動を通して,積極的に学校や地域に参加できた PTA 活動から,直接的な体験を通して,さまざまなことが学べた PTA 活動によって,自分がいろいろな人と付き合っていく方法が学べた 6.7 5.0 25.0 45.8 6.7 5.8 23.3 49.2 5.0 8.3 21.7 53.3 6.7 11.7 37.5 35.0 7.5 10.0 33.3 41.7 全くあてはまらない あまりあてはまらない どちらとも言えない わりとあてはまる 非常によくあてはまる 図 1 PTA 活動を経験した保護者の考え(単位は%、小数点第二位以下を四捨五入)26 に加えて,実際に活動して得られ た成果認識が,再度PTA活動に 参加しようという意欲のみなら ず,ボランティア活動などへの参 加意向にもつながるのである。 おわりに 本論の最初に,PTA活動に参 加した経験を持つ多くの母親が何 らかの「成果」の感覚を得ている ことを示した。図1に示した肯定 的な回答の多い項目は,成果の中 でも主に「人間関係の広がり」と いう側面に該当する。分析におい ても,「人間関係の広がり」を得 ることが社会参加への意向につな がることが示された。またPTA 活動によって得られた成果認識が 予測するのは,単発的なボラン ティア活動ではなく,他者ととも に行う継続的なボランティア活動 への参加であった。つまり,様々 な課題があることは踏まえた上で も,PTA活動を『他者とともに 活動する機会』と前向きにとらえ ることもできるのではないだろう か。たとえ抽選や断れない事情で 最初はしぶしぶの参加であったと しても,活動してみると意外と楽 しいことも多く,社会とのつなが りを促す実りある経験になりうる のではないかと思われる。 文 献 中山満子(2016)PTA 活動経験が向 社会への参加意向に及ぼす影響. 『対人社会心理学研究』 16 , 41-46. 妹尾香織(2008)若者におけるボラ ンティア活動とその経験効果.『花 園大学社会福祉学部研究紀要』 16 , 35-42. 妹尾香織・高木修(2003)援助行動 経験が援助者自身に与える効果: 地域で活動するボランティアに見 られる援助成果.『社会心理学研 究』 18 , 106-118. 欲へと展開する可能性もあるので はないか。そう考えたのが,小論 で紹介する調査を行うきっかけで あった。 PTAで得られる成果と 社会活動への参加 調査(中山,2016)では,子ど もが幼稚園から中学生までの間 に経験したPTA活動について回 答してもらうために,調査時点 で10歳から15歳の子どもを持つ 母親200名のデータを収集し,そ のうち一度でもPTA活動に参加 した経験があると答えた120名を 分析対象とした(平均年齢43.5 歳)。なお,ここでのPTA活動と は,いわゆる役員や委員などに限 らず,単発での行事のお手伝いな ども幅広く含んでいる。質問項目 としては,参加したPTA活動の 実態(活動の頻度や負担感など), PTA活動への参加動機,参加に よって得られた成果に対する認識 を問い,さらに今後,PTA活動, ボランティア活動,自治会・町内 会等の地域の活動にどれくらい積 極的に関わりたいと思うかなどに ついて尋ねた。また向社会性の指 標としての向社会行動尺度にも回 答を求めた。 参 加 動 機 と し て は,「 興 味 が あったから」「やりがいがあると 感じたから」「学校と深く関わり たいから」などの自発性・積極性 を示す因子のみ高い信頼性が得ら れ,この得点を分析に用いた。成 果認識としては,「人に認められ た」「自分自身を認めることがで きた」「自分が好ましい人間であ ることを感じさせてくれた」な どの「自己評価の高揚」因子と, 「他のPTA会員と楽しく活動する ことができた」「積極的に学校や 地域に参加できた」「自分に新し い友達ができた」などの「人間関 係の広がり」因子という,意味合 いの異なる2因子を抽出した。 中山(2016)では,実際に活動 して感じた負担感の高低別に,向 社会行動と成果認識がその後の社 会活動への参加意欲にどのように 影響するかについて検討している が,小論では,参加動機を分析に 投入した結果について述べたいと 思う。中山(2016)では,概して 高負担群で,PTA活動による成 果認識がPTA活動やボランティ ア活動への参加意向へ正の影響を 及ぼすことを指摘した。しかし, そもそも自発的にPTA活動に参 加したのか,あるいはくじ引きや 何らかの圧力によるものなのかと いう動機や理由の違いによって, 次もまたPTA活動に参加しよう とする意欲に違いがあると考える のが自然だろう。そこで,説明 変数としてstep1に動機の自発性 を,step2に負担感と成果認識を 投入し,PTA活動,ボランティ ア活動,自治会・町内会など地域 の活動への参加意向を予測する階 層的重回帰分析を行った。その結 果,動機の自発性を統制した上で も,成果認識のうちの「人間関係 の広がり」がPTA活動への参加 意向に有意な正の影響を与えてい た。また,PTA活動で得られた 成果認識が,他の社会活動への参 加意向に影響を及ぼすかについて も分析したところ,継続的なボラ ンティア活動への参加には,成果 認識の「自己評価の高揚」「人間 関係の広がり」が正の影響を持つ ことが示された。 まとめると,もともとPTA活 動に興味を持ち,自発的に関わろ うという意欲を持つ母親たちは, PTA活動を経験した後に,再度 PTAに積極的に関わろうという 意欲を持つだけでなく,ボラン ティア活動など他の社会活動へ参 加意向を有する傾向にある。これ